これまで当院にご来院になった方の中から、掲載許可を頂いた方の事例をご紹介しています。
✿母乳育児はアウトソーシング✿
里帰り出産をされたEさんが初めて当院に来られたのはお産後2週間の時。特にトラブルがあったわけではないのですが、今後どのように母乳育児をしていけばいいのか教えて欲しい、とのことでした。
来院時にはおおよそミルクと母乳が半々程度の混合栄養で、ご本人のご希望は「母乳メインで、ミルクは忘れない程度に補足できたら」とのことでした
初日の直母量は42g。全体的なおっぱいの硬さがあったため、赤ちゃんが飲みやすいようにマッサージで柔らかくし、あとはご自身でできるケアをお伝えしました。
すると1週間後に来られた時には自然にミルクが減った、とのことで母乳の割合が8割程度まで上がり、その後次第に夜中のミルクがなくなっていきました。
さらに2週間程度の間隔で来てもらったところ、どんどんおっぱいの量が増え、ミルク量は変わっていないのに赤ちゃんの体重がぐんと増えてきました。
本来なら母乳のみでいけるまでに達しましたが、当初の希望であるミルクは忘れないようにするために、ミルクは少し継続していくことにしました。
「夜は寝てくれるし、困った時に相談できる場所ができて、私も実母もストレスがなくなりました。これで安心して自宅に戻れそうです。お産後早い時期に来て本当に良かったです」と仰っていました。
『母乳育児はアウトソーシング』
Eさんの初来院の日のお言葉です。
出産は病院で、母乳育児は専門の施設へ。
なかなか面白いですね。
✿2か月で直接吸えた!✿
元々乳首が短いと言われていたDさん。赤ちゃんは産まれてすぐの時はおっぱいを吸えていたのに、おっぱいが張り始めた頃から直接吸えなくなり、その後ずっと保護器を使って授乳していたそうです。
当院に来られたのは、もう2か月も近いころ。訪問に来た保健師の方に母乳外来受診を勧められたそうです。
さて、おっぱいの方ですが・・・・
直接吸うのと保護器を使用するのとでは、飲める量やおっぱいに入る刺激の度合いが全く異なり、通常保護器を使っている方の乳輪やおっぱいは硬くなっています。Dさんも例外ではありませんでした。
何より大きな問題は、2か月近く保護器乳首の飲み方に慣れていたので、おっぱいを整えてもママのおっぱいを吸う飲み方に変わるかどうか、かなり難しいところでした。
初めてマッサージを行った時は私の指で乳輪部分をつかむことが難しい状態でした。ということは赤ちゃんも吸うのが難しい、ということです。
時間をかけてマッサージをして少しつかめるようになったところで授乳してみましたが、全く吸えず。。。初回は自宅でできる手当をお伝えして終えました。
ところが、ママが一生懸命にケアを行った結果、少し柔らかさのあった右側だけ保護器の後に何回か直接吸うことができ始めたのです。
2回目のマッサージの時には、前回あんなに硬かった乳輪がかなりつかめるようになっていました。さらに、マッサージの後から毎回右側が直接吸えるようになり、その数日後からは左も直接吸えるようになりました。
そうなると、今度はおっぱいの出る量も増えてきました。
ママが心配していた赤ちゃんの体重も増えてきて、3回マッサージをしたところで通院終了となりました。
2か月近くになって直接吸えるようになったのは本当にすごいことだと思います。
Dさんの場合、保護器を使いながらでも授乳回数を保ち続け、おっぱいの出をある程度保っていたのが大きな要因だと思います。
また、生まれてすぐの時に直接吸っていたことの「刷り込み」もあるのではと考えています。
「通った甲斐がありました」
と笑顔で言ってもらえたのが何よりでした。
✿断乳マッサージを受けてなかったから?✿
Cさんは2人目の母乳育児。
1人目の時に産後早い段階でマッサージに来られ、その後トラブルなく過ごしました。
そして今回お2人目の母乳育児が始まったのですが・・・・なんと今回は片方の乳首が陥没してしまっています!!
元々乳首の形は問題ないのですが、今回おっぱいが張ってきたと同時に片方の乳首が埋まってしまい、吸えなくなっていました。
さて、大変です。
今回はその乳首を出すところからケアを始めなければなりません。
病院からは保護器を勧められて購入したものの、結局うまくいかず。
マッサージに来てもらって一緒に授乳をすれば吸えるけれど、自分でしようとするとうまくいかない。
最終的には吸えるようになりましたが、少し時間がかかりました。そして、最後までその陥没した方の母乳の出は反対側に比べて少ないままでした。
どうしてそのようなことが起こってしまったのでしょうか?
考えられる原因は、お1人目の時にきちんと断乳後のマッサージを行わなかったことです。復職などでバタバタしていたこともあり、おっぱい卒業後も何もせず、結局そのままになってしまっていました。
私も反省です。
今回はきちんとマッサージをして最後まで見届けたいと思います。
✿今からでもおっぱい増えますか?✿
Bさんの赤ちゃんは女の子で生まれた時は体も小さめ。そのために、初めから吸い方も弱かったそうです。
けれども、入院中のある日、赤ちゃんがミルクをたくさん飲み、スタッフの人が「わあ、〇〇ちゃん、今回はミルクを〇〇ccも飲んだね、えらいね~!」と褒めてくれたそうです。
それでBさんはどんどんミルクを飲ませた方がいいのだろうと思い、おっぱいをあげるよりもミルクを一所懸命飲ませていきました。
退院後もそのように過ごしていた頃、ネットなどを見ていると、どうもおかしいと思うようになったそうです。
というのも、世間ではミルクがメインではなく、母乳をメインに与えている人の方が多く、ミルクは補足的にあげていくものなのではと思い始めたそうです。
けれどその時にはすでに1か月健診も終わった頃。赤ちゃんはミルクをたくさん飲んで体は大きくなっていましたが、おっぱいはあまり吸っていませんでした。
「今からでもおっぱい増えますか?」
その言葉と共に初めて来院されたBさん。その時に母乳を飲んだ量は6ccでした。
けれども、マッサージにまずは3回通ってもらった結果、おっぱいの量が増えました。
以降月に一度通院され、3か月になるころには1回の母乳量は60ccとなり、逆にミルクは1日200~300cc程度に減り(1か月の時は800ccくらいありました)、全体の7割程度は母乳でいける状態にまでなりました。
実は、1か月を過ぎてしまうと、おっぱいホルモンの量がかなり減ってしまうので、ここからおっぱいの量を増やすのは簡単ではありません。
しかし、Bさんの場合はおっぱいがうまく反応したのと、ご自身でのケアを一所懸命されたことから順調におっぱいの量が増えました。
Bさんのように順調にいく例は決して多くはありません。そのためにも、産後のできるだけ早い時期、できるだけ1~2週間のうちに手当てを始めたいですね。
✿産後1カ月間一度も直接吸えなかったのが!✿
10か月より1週間ほど早く生まれてきたAさんの赤ちゃん。
ほんの少し小さめで、そしてママの乳首も短めだったため、お産後当初からママのおっぱいを直接吸うことができていませんでした。また、保護器と言われる補助道具を乳首につけて吸わせてみたもののうまくいかず、結局1日7回くらい搾乳を続け、それを哺乳瓶で飲ませ続けていました。
そして1か月を過ぎたころ、当院に来られました。
「1か月経ってしまっているのですが、吸えるのでしょうか?」と初めての予約の際に電話口で仰っていました。
1か月間一度もおっぱいを吸っていない場合、直接吸うのが難しいことはよくあります。けれども、まずはマッサージをしてトライしてみましょう、とお伝えしました。
そして運命の初回来院の日。
おっぱいマッサージ後に、お手伝いしながらではありますが、なんと片方のおっぱいが吸えたのです!!二人で手をたたいて大喜びしました。
Aさんの場合、自宅で搾乳を続けていたことで、おっぱいの出がある程度保たれていたことが大きく、マッサージにより赤ちゃんが吸いやすいおっぱいにすることですぐに吸えたのです。
反対側の方は、おっぱいの硬さが強く、吸えるようになるのに少し時間はかかりましたが、それでも3回通院した時点で両方のおっぱいがほぼ毎回吸えるようになり、母乳の量も増えてきて、初めは毎回与えていたミルクもほぼ不要になりました。
本当は入院期間中におっぱいのケアが十分にできていれば、赤ちゃんが早い段階で吸うことができていたと思われるのに、いつか飲めるようになる、と言われて結局吸えないまま過ごす方も多くみられます。
おっぱいが直接吸えない場合、最初の1~2週間の手当がとても大事になってきます。
どうぞ1か月を待たずに、1日でも早くご連絡くださいね。